観客動員から見てもこの上映会が成功しなければ、インディーズ映画、そして商業映画の将来に暗雲が漂うような状況での上映会。この上映会が失敗したならば、映画は単なる金儲けの道具か、独りよがりのアート作品ばかりになってしまう所でした。
結論から言うと、この上映会は大成功。収容人員500名余りの「なかのゼロ小ホール」にほぼ9割の観客動員。こんなにお客が入った劇場で映画を見ることは久しぶりの事でした。勿論、1回だけの上映という事もあるのですが、観客の雰囲気が、「よーし、これから映画見るゾ」という熱気がビシビシと伝わってきて、それはまるで黄金時代の熱気溢れる劇場が帰ってきたような雰囲気でした。
25周年を迎えたシネマドックの皆さんの熱意、それを見続けてきた古くからのシネマドックファン。そして、同時代を併走した制作集団の方々、更に、若い映画作家、観客のみなさん。恐らく夢のような一夜だったに違いありません。
40分前後の2本立て。それはプログラム・ピクチャーの新しい展開でもあり、新しい上映システムへの挑戦でもあるかのようでした。勿論、作品の出来が良いというのが大前提ですが、25周年を迎えたシネマドックはそのハードルを難なくクリアしたように思います。何かが少しずつ変化する予感。単なる作品論だけでなく、作る方も見る方も、何らかの期待を抱かせるような上映会だったと思います。
今回の上映作品
● 高橋 亨監督 「どめくら」(2005)
高橋監督と脚本家のシネマドック吉本昌弘さんのドッキング。これは今年最大の事件でもありました。高橋監督は、インディーズ映画ではクオリティの高い娯楽作品を作る事の出来る貴重な監督の一人。しかし、勢い余ってギャグがマニアックな方向に突き抜けてしまう傾向が多々ありました。それは高橋監督の良い面でも欠点でもあると思うのですが、今回はそれが良い方に出たように思います。それはシナリオの良さが第一に挙げられますが、主役の高橋健一さんを始めとする出演者の方々の熱演による賜物だったように思います。監督のパワーだけではなく、役者さんの個性+シナリオ+演出のパワーバランスがこの作品の最大の見所でした。
今回の作品は、公開当日まで編集していたという事で、前半は多少、雑な繋ぎの箇所も見受けられましたが、再映の時までには完璧な形になっている事でしょう。
この作品で高橋監督が、女優・星野佳世さんの新しい魅力を引き出したのも大きいと思います。これで、星野佳世さん主演のしっとりとした本格的な女性映画という新しい可能性も広がったように思います。
● 吉本昌弘監督 「ピーナッツ」
正直言って、こちらはあまり期待していなかったのですが、「どめくら」以上の傑作でした。シネマドックの作品は、とにかくシナリオがしっかりしているので、ある程度安心して見ていられるのですが、この作品は、「どめくら」の併映作品と言うことで、案外リラックスして撮られた作品ではないかと思います。画面を見ていると、吉本監督をはじめ役者さんやスタッフが映画作りを楽しんでいる様子がビンビン伝わってくるような作品でした。
このような作品では、俳優さんの好感度が重要な決め手になるのかもしれません。「どめくら」から一転してサングラスをはずし、別人のような高橋健一さん、ストーカー・ドック岩瀬厚一郎さんの怪演、それに二人の女優さん(富澤友加里 、吉崎仁美)のハツラツとした演技も忘れてはいけません。
吉本シナリオも、案外アッサリしているのですが、導入部の多少強引な展開からラストへの繋がりは、思わず拍手をしたくなるほどの見事さでした。演出も「PINKY」の時の重さは感じられず、役者の良い面を自然に引き出したような肩の力を抜いた演出は、この作品の良さを一層引き出しているかのように思います。(担当:13号倉庫)
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